春がやってきた!モンテカルロ・マスターズをレビューしましょう。
カウントダウンの開始。モンテカルロ・マスターズがほんの数日後に迫りました。テニスシーズンが第2四半期に入り、北米でのサンシャインダブル(インディアンウェルズとマイアミオープン)の結果に続き、コートで繰り広げられるストーリーとドラマはエキサイティングでファンを魅了します。第1四半期に好調だったプレイヤー(特にダニール・メドベージェフ、カルロス・アルカレス、ヤニック・シナー)は絶好調を維持しようと奮起し、その他のプレイヤーは絶望感と焦燥感にかられた2023年の最初の3か月間から這い出そうと虎視眈々。春のクレイコートシーズンに向けてツアーがヨーロッパを移動する中、プレイヤーたちはカリフォルニアとフロリダの太陽を後にし、地中海へと向かいます。最近のトーナメントで活躍した選手たちを見ながら、クレイコートシリーズの第一弾、4月9日~4月16日に南東フランスのモンテカルロ・カントリークラブで開催されるモンテカルロ・マスターズを検討します。
テニスのカレンダーにおいて、最も古い歴史を持つトーナメントの1つ、歴史的イベントである当トーナメントはなんと1897年(126年前)に始まりました。それ以来115回ものトーナメントが催されてきました。今年は総賞金額、5,779,335ユーロが用意され、シングル本選に56人、ダブルス本選に24組のプレイヤーが名を連ねて戦いに挑みます。フレンチ・リヴィエラのモナコと国境を共有し、絵のように美しいロクブリュヌ=カップ=マルタンのコミューンで繰り広げられる本大会。ここでは、ファンに愛される史上最高のプレイヤーの一人、他ならぬラファエル・ナダルが長年にわたり大勝利を収め、レッドクレイコート上でなんと11回の優勝を果たしてきました。この記録には、2005年から2012年の8年連続優勝が含まれます。
ただし今年度は、1月にオーストラリアで彼を苦しめた左腰のケガの回復が間に合わなかったようで、本大会を見逃す運びとなりました。ナダルが欠場する中、2023年度を不安定な成績で開始したものの、前回と前々回の優勝者であるステファノス・チチパスが本大会の本命となっています。チチパスは、1月のメルボルンでは準優勝を果たしたものの、それに続くロッテルダム、インディアン ウェルズ、マイアミでは残念にも早期敗退となりました。しかしながら、チチパスのゲームはレッドクレイコートでの試合に適したものです。その一方ファンは今年、元優勝者であるスター選手(しかし今では老兵となりつつある)、スタン・ワウリンカとファビオ・フォニーニといった選手のプレーを観戦することができます。この二人の選手はすでにキャリアの終盤に入っています。
次にシーズン早期に好調なスタートを切ったプレイヤーに焦点を当て、今後のイベントでのチャンスを検討してみましょう。
メドベージェフがリード
ロシア人のダニール・メドベージェフは第1四半期において、素晴らしい成績を収めました。2月から4月初旬の間に5つのハードコートトーナメントにおいて24勝1敗の成績を上げ、ロッテルダム、ドーハ、ドバイで優勝、マイアミのイベントでは優勝という快挙を成し遂げました。2022年を悲惨な結果で終え、1月のメルボルンで早期に敗退した後、この元世界ランキング第1位の選手は、短い期間ではあったもののトップ10から脱落したのです。しかしその後、彼は3大陸にわたる5つのイベントで4回の優勝を果たすという快挙を成し遂げました。
この快挙を成し遂げる中、本年のツアーで最多勝利記録(ヤニック・シナーの21勝を8勝上回る29勝)を生み、世界ランキング*第4位に返り咲きました。これは肉体的および精神的な強さを示す非常に素晴らしい成績です。彼はこの快進撃をスムーズにヨーロッパのクレイコートへと移そうとしています。しかしながら一般的に言って、ハードコートのスペシャリストにとってクレイコートで好成績を上げることは容易ではありません。シナーは安定した成績を上げていますが、キャリアにおいてクレイコートで優勝を飾ったことはまだありません。
アルカラス、勝利に向けて闘志を燃やす
2022年からの躍進的スター、スペインはムルシア出身10代のカルロス・アルカラスは、最近のマイアミ オープンの準決勝でヤニック・シナーに敗れ世界第1位の座を明け渡したものの、男子ドローにおいて最も有名な選手への道をまっしぐらに進んでいます。19歳の彼はケガのために今年の最初の6週間をあきらめざるを得ませんでしたが、2月にツアーに戻ってから、その快進撃を止められるものはほとんどいません。3つのトーナメントで連続して決勝にたどり着き、ブエノスアイレスとインディアンウェルズで優勝を飾りました。しかしながら、シナーに敗れた際に彼が見せた疲労は、もしかすると、ツアーに戻ってからのプレーし過ぎの兆候かもしれません。そして残念なことに、ナダル同様にアルカラスも医師の勧めにより欠場する結果となりました。テニスファン待望の、ノバク・ジョコビッチとの最終決戦を待ち望んでいた観客にとっては非常に残念なことです。過去12か月間、さまざまな理由からこの2人は対戦することがほとんどなかったためなおさらです。アルカラスの強烈なグランドストローク、足の速さと柔軟性、思いがけないドロップショットのコンビネーションは、どのコート面でも効果的ですがクレイコートではその効果が倍増します。大きな舞台でこの二人の試合を見ることができるのは、もう少し先になりそうです。
ジョコビッチ、世界ラインキング第1位の足場固めを狙う
ここ3か月におけるメドベージェフの圧倒的なプレーにもかかわらず、カルロス・アルカラスがマイアミオープンのタイトルを守ることができなかった後、男子選手の世界ランキング第1位に返り咲いたのはノバク・ジョコビッチ。グランドスラム優勝を22回飾ったチャンピオン、ジョコビッチの記録破りは続きます。ワクチン接種ステータスのためにビザが下りず北米でのマスターズを2回逃したにもかかわらず、ジョコビッチは、世界第1位の通算在位期間381週と、シュテフィ・グラフの通算在位期間記録377週を破りました。ジョコビッチはこれまでの実績を見ても、あらゆるコート面で優れたプレーを見せる、さまざまなコンディションに適応する能力を持つプレイヤーであるため、2月にプレーしたドバイのアクリル舗装のハードコートからの変化によって影響を受けることはないでしょう。大きなライバルであるナダルがケガのために欠場する中、ジョコビッチはキャリアにおける39番目のマスターズ優勝を狙います。とはいうものの、彼のモンテカルロでの成績は勝率73%といまいち。この勝率は、彼の他のどのマスターズイベントでの勝率よりも低く、最後にここでトロフィーを手にしたのは2015年と、彼の基準から見ると長い不毛な期間となっています。他の数々の才能あふれるプレイヤーを考えると、今年も例年同様、彼がステージを独り占めすることはないでしょう。
ナダルの回復間に合わず
1月に全豪オープンで左腰を痛めてから欠場しているスペインの偉大なるプレイヤー、ナダルは、残念ながら本大会までに十分に回復することができませんでした。バルセロナ(4月15~23日)での復帰を狙い、「クレイコートの王者」、ナダルは、パリで5月の後半に催される全仏オープンに向けて最善の準備を整えられるよう、今後のマドリッドとローマでのマスターズを完璧なコンディションで迎えようとしています。全仏オープンはナダルがなんと14回もの優勝を果たした彼の「ホーム」イベント。この大会は、テニス史上最も偉大な男子プレイヤーを目指してプレーする彼が、キャリア全体を通じたライバル、ジョコビッチとの間に壮絶な戦いを繰り広げるのをテニスファンが待ち望んでいる場所でもあります。ナダルの欠場、そしてアルカラスの欠場により、モンテカルロのドローには大きな穴があくこととなり、圧倒的な優勝候補としてのジョコビッチのステータスにプレッシャーがかかります。果たしてジョコビッチはこのチャンスを生かし、8年ぶりに本イベントでの3番目の優勝を飾ることができるでしょうか?
シーズンの快調な出だしを狙うクレイコートのスペシャリスト達
優勝候補として少々見過ごされがちなのは、世界第5位*のノルウェー人選手、キャスパー・ルード。24歳の彼を過小評価してはなりません。彼は、前シーズンでグランドスラムの準優勝2回を果たしましたが、これには全仏オープンが含まれています。ルードは、キャリアにおける9回の優勝のうち8回をクレイコートで達成しており、クレイコートスペシャリストの選手たちのグループをリードしています。さらに彼は、クレイコートで行われた3つのマスターズシリーズ(モンテカルロ、マドリッド、ローマ)で準決勝にまで上り詰めました。
この安定した成績にもかかわらず、ルードはまだ最上層のトーナメント(グランドスラムまたはマスターズ1000)で優勝することができていません。チチパス同様、勝利が期待されていた試合で低いランキングの選手に負けて早期敗退するという残念な結果で本年を開始したルードは、得意のクレイコートで自信を回復し、勝利をつかもうと奮起しています。ルードは、昨年のピーク時のパフォーマンスを取り戻せるでしょうか。それとも、昨年にも増して好成績を上げ、ここでトロフィーを手にすることができるでしょうか?
そしてもう一人検討すべきなのは、世界第9位のイタリア人選手、ヤニック・シナー。インディアンウェルズとマイアミの両方で素晴らしいプレーを見せた彼は、間違いなく注目すべき選手です。最近のアルカレスとの劇的な対戦では、計り知れないほどの才能と、世界ベストクラスの選手相手に対等にプレーする能力を見せてくれました。アルカラスとのこれまでの対戦成績が3勝3敗と、今後のテニスの頂点における彼らのライバル関係の兆しを見せているかのようです。
188センチと背が高くやせ型の21歳の彼は、彼の身長からは考えられないようなスピードと、フォアハンドとバックハンドの両サイドから繰り出されるパワーを備え、あらゆる対戦相手を窮地に追い込みます。コート外では物静かで控え目なことで知られるシナーは、もしかするとスポットライトは苦手かもしれませんが、超有名選手がうけるような過度なプレッシャーをうけることなく、安定した足取りでランキングを上げています。このことは、21勝5敗という彼の本年度の成績にも示されています。果たしてシナーは、モンテカルロでも好成績を上げ続け、初のマスターズ1000優勝を飾ることができるでしょうか?
イベント開幕を直前に控え、熱い期待は高まるばかり。本記事で触れたのはイベントのほんの一部にすぎません。1xBitで、世界中の重要なスポーツイベントの最新のホットな情報を手に入れましょう!
*本記事の執筆時点(4月4日)において